ステートメント

ご挨拶
ボゴタ在住のTakaaki KJと申します。ほんの偶然から南米コロンビアに住み始めて7年になります。最初の3年ほどは当時取り組んでいた日本美術史の博士論文を書き上げるため一人で作業をすることが多かったのですが、201611月に友人で日本出身のアーティスト熊澤明子さんの個展を企画したことを皮切りにキュレーターとしてさまざまな企画にたずわることになりました。2020年現在、ローカルアーティストおよび日本出身作家の展示を合わせ30以上の企画に携わってきました。

コロンビアにおけるアートの現状
コロンビアの人口は約4900万人(ラテンアメリカではブラジルとメキシコに次ぐ第三位)と日本の半分以下ですが、コンテンポラリーアートの世界は裾野が広く、首都で最大の都市ボゴタ(人口約800万人)市内には、ボゴタ現代美術館(Museo de Arte Moderno de Bogotá) や各公的機関が所有する展示スペース、コマーシャルギャラリーやオルタナティブスペースを含めると、300を超えるアート関連施設があると言われています。旧市街(Centro) 周辺やここ数年新たなアートディストリクトとして発展してきたサンフェリペ (San Felipe) 地区などでは、毎月数えきれないほどの企画展示が行われ、Periodico ARTERIAなどアートに特化したメディアによりアートシーンに関するコンスタントな情報の配信がおこなわれています。

またコロンビア国立大学(Universidad Nacional de Colombia)、ボゴタ首都特別区立大学(Universidad Distrital)、ロスアンデス大学(Universidad de los Andes) といったボゴタ市内の主要な高等教育機関の大多数が複数の専門課程に分かれた美術学部を擁し、多くの学生がアーティストとしてのトレーニングを受けています。クリエイティブであることを重視するラテンアメリカ特有の国民性の影響からか一般市民のアートに対する関心は非常に高く、各展示のオープニングはアートコミュニティーを超えたより広い層の人々で賑わうことも少なくありません。展示期間中には参加作家やキュレーターを招いたトークイベント等が開催され、美術表現を超えた社会問題や政治的なプロセスなどを巡りクリティカルな対話が生まれる現場となっています。

コロンビアで日本のアートを展示するということ
コロンビアは他のラテンアメリカ諸国同様、親日的な国で、若い世代の日本を含むアジア諸国の現代カルチャーに対する興味が非常に強いのが特徴です。コロンビアではブラジル、ペルー、アルゼンチンなどのケースと比較すると歴史的な日系移民の流入ははるかに少なく、これまで一般社会におけるアジア文化のプレゼンスが希薄だったこともあり、世代を問わずアジア文化がエキゾチックないわば「究極の」他者ともいうべき位置付けを受けてきたという経緯があります。こうした一般の興味を受け近年日本をテーマとした文化系イベントが定期的に開催されるようになってきており、第三の都市にカリにある日系文化センター (Centro Cultural Colombo-japonés)やボゴタ市のロスアンデス大学日本センター、メデジンの市に拠点を置くRyuhikaiなどは日本文化の普及に大きな役割を果たしています。

アジア文化に対する興味が盛り上がる一方、日本を含むアジア諸国のコンテンポラリーアートに触れる機会は極めて限られており、今後は作家やキュレーター、専門家の交流など大きな開拓の余地がある状況です。事実私がこれまで企画してきた日本在住作家の展示ではオープニング時に会場が満員になることが多々ありました。これらの展示では「伝統」文化やいわゆるオタク系カルチャーなど半ばステレオタイプ化した言説を批判的に解読しながら、人口減少社会における都市と地方の差異化や、グローバルな人口の流動化に伴う境界領域としての日常を生きることなど、日本においてアート制作がなされるリアルな文脈をリサーチしつつ展示を企画しています。

CASADUCUARAについて
2019年よりボゴタ市ガレリアス地区に位置するCASADUCUARA(casaducuara.com)を拠点にプロジェクトを進めています。CASADUCUARAはボゴタ出身のアーティスト、エステイ・ドゥクアラが(Estey Ducuara) がリードするスペースで、2019年秋に4つのスペースからなる新展示フロアをオープンしたことを期に現在まで複数の企画展を行ってきました。現在、CASADUCUARAとガレリアス地区の複数のアートスペース、シアター、アーティストのスタジオなどを巻き込むアートディストリクトNODO51を立ち上げる計画が進行中で、202012月にプレオープンを予定しています。

CASADUCUARAウェブサイト: casaducuara.com

筆者プロフィール:
Takaaki KJ

東京生まれ。東南アジア、アメリカ合衆国、メキシコなどを経て、現在コロンビアと日本を主要な拠点として活動。カンザス大学大学院にて美術史博士号(Ph.D., Art History)、大阪大学大学院にて人類学修士号取得。博士論文『北川民次の美術と美術教育:革命後メキシコと現代日本における文化の翻訳』。

リンク:https://kuscholarworks.ku.edu/handle/1808/26339

インディペンデントキュレーター、美術家。コロンビア、メキシコ、アメリカ合衆国、日本にて、展覧会キュレーション、学会発表、講義、トークイベント等の実績多数。

CV 日本語 (2020年8月現在)

現在のところ当ページの大部分はスペイン語ですが、ブログ(takaakikj.com/noticias/)ではコロンビアを中心とするラテンアメリカのコンテンポラリーアートなどについて日本語の記事も作成しています。